ISM製造業景況指数から米国の景気転換を読み取ろう

景気転換の先行指標、ISM製造業景況指数について

景気転換の先行指標、ISM製造業景況指数について

ISM製造業景況指数とは製造業の最重要指標の一つで、ISM(Institute for Supply Management)が製造業約350社以上の仕入れ担当者にアンケート調査を実施して発表する指標です。

アンケート内容はGDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在では新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の項目を1カ月前との比較として良い、変わらず、悪いの3択で回答して集計たものとなる。

 
■ 新規受注 : (前月に比べて)良い、同じ、悪い
■ 生産状況 : (前月に比べて)良い、同じ、悪い
■ 雇  用 : (前月に比べて)良い、同じ、悪い
■ 入荷遅延 : (前月に比べて)良い、同じ、悪い
■ 在庫状況 : (前月に比べて)良い、同じ、悪い

 

しかし、集計したアンケート結果だけを発表していたのでは不規則変動が含まれ、変化の兆候の判断が困難なことも多いため、経済指標として発表する際は経済統計の月次、または四半期の時系列データから季節要因を取り除いた季節調整を加えています。

ISMが発表する指標には製造業景況指数と非製造業景況指数の2種類がありますが、ISM製造業景況指数は、月々の景気動向を示す指標の中で、翌月第一営業日に発表されることから、米国の景気先行指標として注目されている指標と言えるでしょう。

また、本指標は利上げの判断基準の一つともなっており、過去、米連邦準備理事会(FRB)はISM製造業景況指数が景気転換の基準を下回った場合は一度も利上げをしておらず、FRBの利上げスタンスを見極める意味でも注目される事が多い指標と言えます。

製造業景況指数と非製造業景況指数の違い

製造業景況指数と非製造業景況指数はISMが発表する指標で、製造業景況指数が製造業を対象に調査された指数に対し、非製造業景況指数は非製造業(製造業を除く、サービス業などの業種)を対象としている指数です。この2つはどちらも景気動向を示す指数ですが、発表時期は若干異なっており、製造業景況指数が翌月第一営業日に発表、非製造業景況指数は翌月第三営業日に発表されるようになっています。

指標の見方としては製造業景況指数の総合指数であるPMI(Purchasing Managers Index)、非製造業景況指数の総合指数であるNMI(Non-Manufacturing Index)が重要視されており、PIMまたはNMIが景気転換の基準である50%を上回ると景気拡大傾向、50%を下回ると景気後退傾向と判断されることが多い。

また、毎月の発表される資料には作成責任者のコメントが掲載されており、データを読む上で参考になるため、指標発表時は注目しておきたいところです。

ISM製造業景況指数に類似した先行指標について

米国の景況感を読みとる先行指標であるISM製造業景況指数ですが、そのISM製造業景況指数に類似した指標に、フィラデルフィア連邦準備銀行が各管轄地域を対象として作成した製造業景気指数、”フィラデルフィア連銀景況感指数”というものが存在します。

フィラデルフィア連銀景況感指数が先行指標として注目されている理由は、翌月第一営業日に発表されているISM製造業景況指数の総合指標であるPMIより速報性が高く、各当月第三木曜日に公表しているため。

フィラデルフィア連銀景況感指数はその名の通り、フィラデルフィア地区(ペンシルバニア州、ニュージャージー州、デラウエア州)の製造業の景況感や経済活動を示す景気関連の経済指標なので規模的にはそんなに大きくありませんが、全米を対象としたISM製造業景況指数発表に向けた先行指標として注目度が高いのです。

ISM製造業景況指数から読み取る為替の動向

ISM製造業景況指数から読み取る為替の動向

最後にISM製造業景況指数が発表されて、為替がどのように動くかしっかり把握しておきましょう。

製造業景況指数と非製造業景況指数の違いでも少し触れたように、景気転換の基準である50%を上回ると景気拡大傾向、50%を下回ると景気後退傾向と判断されることが多いと解説しましたが、基本的に ISM製造業景況指数が50%以上だと米ドルが買われやすくなり、50%未満だと米ドルが売られやすい状態になります。

多くの投資家が注目している指標なだけあって、ドル買いのために他の通貨売りに走る投資家が出てくることまで懸念して取引を行う必要があります。

また、GDPに先行して景気転換を示唆するという意味でも重要視されているため、景気動向を追う上ではニューヨーク連銀景況感指数、フィラデルフィア連銀景況感指数、ISM製造業景況指数というように、時間軸に沿って製造業の景気指数の動向を把握しておくようにしましょう。

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